「 薪づくり・薪のこと 」 一覧
薪の重さを量る2
薪を雨ざらしにすることの効果について、実際に雨ざらしの薪とそうでない薪で比較をしている。(「薪の重さを量る」)。まだ始まったばかりでやっと最初の1ヶ月が過ぎたところだ。
それぞれの薪の重さを量ってその推移が下のグラフ。それはつまり水分の減少だ。
薪棚の薪は順調に水分が減っていくが、雨ざらしの薪は当然のごとく雨に大きく左右されているね。グラフの後半は降水量が多く、水分をたくさん含んだままだ。
梅雨入り前に雨ざらしを中止した方がいい、あるいは、晴天が少し続けばすぐ元に戻るのだからやはり雨ざらしでいいのだ、などいろいろ見方はあるだろう。
最終的には雨ざらしの方がよく乾く、という仮説がこの実験のはじまりだ。いずれ雨ざらしを止めてどちらも薪棚に納まってから以降は、雨ざらしだった薪の方が水分の減少率は大きくスピードも早いのではないか。それが雨ざらしの効果なのではないか。理由は最近の私の記事の通り。
・・・もっと日数が立たないと何もわからないね。まだまだ様子を見て行かなければならない。
もうひとつ注目しているのは、乾燥から自由水がほぼ抜けて含水率30%前後の繊維飽和点に達するまでの期間のことだ。それはグラフが右下がりの急カーブから横ばい傾向に転じるあたりで判断できる。
それが「薪材屋外乾燥に就いて」では最初の約2ヶ月だと推論している。これに一致するのかどうか。自由水があるうちが雨ざらし期間だというこれも仮説なのだ。
今回の場合、原木を玉切りしたのが4月21日。割らないで乾燥させていたが割ったのは5月末。すると6月の下旬あたりが乾燥から約2ヶ月ということになる。
さてさてどうだろう?
とにかくまだちょうど1ヶ月。途中経過だ。
天候に左右されながら水分が減少する様子は見てとれるね。
ナラの導管2
写真は乾燥から15ヶ月のコナラの木口。
こいつは2006年4月に原木で手に入れて以降、一度も雨ざらしになってない。当時は雨に濡れるなんてトンでもない、絶対濡れないよう屋根のしっかりした薪棚を作って、割ったらすぐギッチリ大切に積んでおいたものだ。
パッとみて導管が無数に並んでいることがわかるが、下の写真で拡大してよーく見ると一つ一つはほとんど開いていない。いやむしろ導管はそこにあるのに、中で何かが詰まって塞がってしまったように見えないだろうか?
(これが導管を塞いでしまうという働き・物質(チロース)のことだろうか??)
雨ざらしの薪と比べていかにも通導が無さそうだ。ほかにも肉眼では見えない小さな導管がそれこそ無数にあるというのに、これらもみな塞がっているとしたら?
薪棚に積んだ場合、木口こそが空気に一番触れるところなのにここが塞がっていたら乾燥が進まないではないか?
案の上これらの薪は、シーズン中(8ヶ月~12ヶ月の頃)は乾燥がいまいちだった。焚くことはできたが、本当はもっと乾燥させたくて2年ものとして来シーズンまで温存しておきたいくらいだった。
もしこれが雨ざらしの期間を設けるなどもっと合理的な乾燥方法でいれば、このコナラはもっと乾燥が進んで、シーズン中をもっと気持ちよくもっと暖かく燃えてくれたかもしれない。
という希望的憶測のあくまで仮説。
時間をかけることこそが最良の乾燥方法だとしても、同じ時間をかけるならもっと上質でもっと極上の薪であるに越したことはないのだ。
ナラの導管
(写真1)は雨ざらしの薪だ。
自宅のウッドデッキで実験的に雨ざらしにしているミズナラ。
実験開始からまだ20日足らずだが、注目は導管。ナラは太い導管が年輪に沿って無数に並んでいるが、そのひとつひとつがバックリと口を開いている。(写真をクリックで拡大)
(写真2)は薪棚に積んだ薪だ。
割ったら雨のかからない薪棚に積むという普通のやり方だ。順調に含水率が下がっていく一方で、雨ざらしに比べると導管が目立たない。むしろ塞がったままの部分も多い。(写真をクリックで拡大)
それぞれ同じ玉を半割して片方を雨ざらし、もう片方を薪棚に積んだものだから樹体としての条件は同じ。
ということは、雨ざらしによって(写真1)のように導管が大きく開いたということは言えそうだね。
また、ものの本によると、広葉樹の導管は水分通導を終えると内部に閉塞する物質が形成されて自ら導管を塞いでしまうという。
神森@バルーン野郎さんに頂いた「水中乾燥」のコメントにも合致するよね。
だから雨ざらしにすることで擬似的に水分通導状態にして導管の通導を確保し、同時に水中乾燥に似た効果を得ることができる。
という仮説だ。
いずれにしろ、導管がパックリ開くことで乾燥が促進されるとすれば願ってもないこと。
特に雨ざらしを終えて薪棚に積んだ以降の効果が期待できるんじゃないかな。
水中乾燥
水中乾燥とは面白い言葉だ。生の丸太を水に浮かべて乾燥させる。水乾燥とも浸水乾燥ともいうらしい。昔から建築の世界で行っている乾燥方法だ。
木は水につけることで内部の樹液や樹脂成分が浸透圧によって水中にとけだしてくる。水と置き換わって余計なものが固着しないから導管や細胞レベルでの通道が確保されて、その後の乾燥を加速させる。
単にアク出しとかアク抜きを目的にする場合もある。
また、木というものは伐られると内部の水分を保とうとして細胞の弁を閉じるのだそうだ。そこで水につけることで、細胞の中の弁(壁孔)が水の浸透圧によって開放状態に戻るため水分の移動が容易になり、樹脂などと水の交換が行われて水分が移動しやすくなる。
すごいね。私には神秘の世界だ。
水分によって乾燥を促進させるとは、昔の人は経験的にすごいことを知っていたものだ。
この水中乾燥は建築材のためであって、割れない反らない強くなるなどもっと他にたくさんの意味がある。我々薪ストーブユーザーの薪の乾燥とは目的も仕上がりも求めるものが違うが、薪を積極的に雨ざらしにするヒントの一つかもしれないね。
薪が乾くスピード
先の「薪材屋外乾燥に就いて」では自然乾燥(雨ざらし)で日数とともに水分量が減少する様子が興味深かった。
割った直後の初期段階で比較的早く水分が減り、繊維飽和点以降はゆるやかになる。グラフにするとおそらく上のような曲線だ。
このことは、木の水分は自由水と結合水で成り立っていることで説明できそうだし、この自由水が抜ける時間が実験では約2ヶ月あまりと読みとることができるがどうだろう?
つまり薪は玉切り&薪割りから最初の2ヶ月で自由水の大半が抜けて28~30%前後の繊維飽和点となる。その後、平衡含水率に落ち着くまでゆっくりと6ヶ月とか1年以上をかけて結合水が抜けていく。結合水は細胞壁の中に結合している水だからこいつが時間がかかるのだ。
で、薪ストーブユーザーの私としてできることは、加熱や減圧で結合水を抜くなんてできっこないのだから、せめて割った直後の初期段階で自由水をできるだけ早く抜く。
これなら何かできる余地がありそうだ。
割ってすぐ積まないで雨ざらしにするのもこの時期のことと思えるし、それがその後の乾燥を促進するような状態を作り出しているのではないだろうか。
薪は土用まで雨ざらし
「薪は土用まで雨ざらし」という言葉がある。
語呂も良いし好きなフレーズだ。
いつの時代、どの地方で、どんな人たちが?と気になって調べるけれどネットには口コミ以外ほとんど記述がない。常識とさえ言われるが、ことわざや言い伝えの中にも登場しないし、誰も解説していない。
確かに私の浅い経験でも合点がいく。割った直後の薪は大事に屋根をしてしまっておくより、ある程度風雨にさらした方が良い。でもなんで「雨ざらし」が効果あるんだろうか?
私は最初、雨だけじゃなく太陽や風にもよくあたる「天ざらし」だと理解しようとしたが、多くの人が「雨」に打たれることにこそ効果があると言う。
だから「土用まで」には梅雨の意味も含まれ、梅雨明けまでしっかり雨にさらして夏の天日に干しながら屋根をしたり軒下に積んで秋に備える、と解釈すればこれはこれで筋が通る気はする。
そもそも雨に打たれることで薪はどのように乾燥が促進されるんだろう??
もしそうなら効果的な雨ざらしの方法があるかもしれない。
雨=水が関係するなら、ホースで水をかけて人工的に雨ざらしを促進することもできるはずだ。理屈では昔の貯木場のように池に浮かべることだって有効になる(笑、6トンの薪を池にか?非現実的だ)。
一方、「土用」である必然性について、昔は農作業を軸に暮らしが成り立っていたから、薪仕事は農作業の合間にスケジュールされたに違いない。種まきや田植えの忙しい時に薪積んでる場合じゃないからね。ひと段落して梅雨も明けた頃に天日干ししながらもろもろの秋の準備をするのが一番都合が良かったのではないか。
(土用の間は土をかまうことは忌むこととされ、農作業をしない期間とされたらしい。炎天下の一番暑い時期にヘビーな農作業は避けるって昔の知恵だ)
そういう都合が優先されての「土用」であって、純粋に薪の乾燥だけを考えるならケースバイケースで現代は別のタイミングがあっていいんじゃないか?
ましてやみんなそれぞれ住む地域が違えば気候も違うし薪棚も薪割りの方法も時期も違う。現代は多様だからね。
いずれにしろ、ここはひとつ土用にこだわらず、積極的に雨にさらすことでどのように乾燥が促進されるというのだろう?、を考えようと思うわけだ。
薪材屋外乾燥に就いて
1955年に「薪材屋外乾燥に就いて」という薪の乾燥に関する実験が北海道立林産試験場で行われている。
「薪材は積んでから何日すればどの程度の含水率になるか?」という質問をうけて、そういえばそんなデータは見当たらないし、薪の屋外乾燥は比較的野放図(雨ざらし?)に行われているから、もっと合理的に乾燥効果をあげるための条件を調べよう、という主旨の実験。
中身は言うほど大そうなものではないが馬鹿にしたものでもない。興味のある人はご覧の通り。
継続して実験すると書いてありながら掲載は1955年の1回きり。続報がないところを見ると、この後ますます薪の需要は減って検証する意味も失われていったんだろうか。
あれから半世紀。
今は森林や木質エネルギーの活用に関心が戻りつつあるし、私たちも薪ストーブの暮らしを楽しんでいる。
薪を知ることは木を知ることだし、こんな検証も悪くはないだろう。
北海道立林産試験場トップページ
林業指導所月報 1955年11月号「薪材屋外乾燥に就いて」(要:サイト内検索)
薪の重さを量る
薪の重さを記録しようと思いついた。
薪は乾燥すれば重量が減っていくから、すなわちそれが水分の減少量だよね。それぞれ違う環境で保管してその推移を記録してみる。
薪割りはもう終わっていて、やっと一つだけ残っていた径が15cmのミズナラを半割にして、ひとつはウッドデッキに放置して夏の土用まで雨ざらし。片方は普通に雨のかからない薪棚というわけだ。
さてどうなるだろうね。
量るのはポケットに入れて持ち運べるデジタルの吊りはかり。10g単位で20kgまで量れる。
6月1日から3.13kgと3.04kgでスタートしたが、6月3日に量ったらもう減っていたぞ。2日間で40~50g減少。乾燥の初期段階だから目に見えて減るんだろうが、今後どんなカーブを描いて減っていくだろう。楽しみだねえ。特に雨ざらしとの比較が興味津々だし、最終的に焚くときには何kgになって、どんなことがわかるだろうか。
今回は思いついたのが遅すぎたが、次の薪割りからはたくさんのサンプルでいろんなパターンで記録してみるつもり。
薪の乾燥するしくみを通して木を調べれば調べるほど面白い。このところこの手の調べモノにすっかりハマってしまっている。
薪棚に積む3
上の写真が今年で、
下の写真が昨年の同じ薪棚だ。
パッと見ではあまり差はないが、よく比べて見ると昨年の方が薪が細かく割ってある。今年に比べれば中割や小割ばかり。ご苦労なこと、要は薪割りがヘタクソなんだ(笑)。
積むときも隙間のないようギッシリ積んだ。通気なんてほとんどなかっただろう。だから細かく割ったくせに乾燥のためにはよくなかった。
今年は「薪棚に積む」の通り、風通しよく乾燥を意識して積んでいるつもり。でもその分、薪を大きく割ってあるから乾くのに時間がかかる。この差がどういう結果になるだろうか。
今のところ乾燥期間が同じであれば、風通しよく積むことの方が大切であって、薪のサイズアップは問題ない。という仮説でいるんだけどね。
ちなみに「三方五」を超えるような特別の大割は写真にはない。はじめから2年ものとして別に積んである。
どっちにしてみても、結局はもっと割った方がよく乾燥しよく燃えてより暖かい、という結果になるかもしれない。乾燥期間の長さの方が問題かもしれない。
が、それも予想のうち。まあ、やってみなきゃわからない。
試してみよう。どうなることやら。
薪棚に積む2
薪は1日でも早く割るが、薪棚に積むのはのんびりやっている。
4月下旬に割った6トンの薪のうち、薪棚に納まったのは半分くらい。残りは天ざらしのままにしている。地面で濡れっぱなしだったり、虫がついたりしないよう時々様子を見ながら、梅雨まではこうしておくつもりだ。
この間、適度に小割を作りながら、大き過ぎる大割を割り直したりしながら、薪割りを楽しんでいる。
井桁にしてるのは仮積みだ。触ると崩れるぞ(笑)。
薪は最初の2ヶ月が最も乾燥する度合いが大きく、その後はゆるやかに乾いていくという。だから割った直後はできるだけ天ざらしにしておこうというわけだ。
もし私が薪置き場だけで50坪くらい空きスペースを持っていたら、薪割り後は敷地いっぱいにこうして井桁で仮積みをして雨ざらしにするんだけどね。
さらに天気の良い日はホースで水をかけて、雨ざらしのペースを早めるってのはどうだ?
いやいや大マジメだ(笑)。雨と晴れ、濡れたり乾いたり、という収縮のサイクルを早めることにならないのかな。乾燥させたい薪に対して水をかけるなんて発想は今まで聞いたことがないけれど、薪割り直後の雨ざらし期間に限っていえば案外有効だったりして。いつか実験してみようか。